2008年9月のアメリカの金融危機に端を発した経営不安の中で,非正規労働者の切り捨てが全国各地で進行している。2009年5月1日の厚生労働省発表によると,派遣労働者・期間労働者・請負労働者・パート労働者などの非正規労働者の失業が,昨年10月から本年6月にかけて約20万7000人に達するとのことである。そのうち約65%が派遣労働者であり,派遣労働者の地位が極めて不安定であることを如実に表している。山形県内でも昨年10月から本年6月までで約5500名の非正規労働者の失業が発生し,全国的にみても深刻な事態に至っている。
1985年成立の労働者派遣法は,派遣対象業種を専門性の高い業務に限定していたが,その後の規制緩和の流れのもと,1999年に労働者派遣が原則自由化され,2003年には製造業への派遣も解禁された。その結果,企業はコスト削減を目的として派遣労働者の雇用を拡大することとなったが,派遣労働者を雇用の調整弁として使用したため,不況のもとその雇用が安易に打ち切られる事態となったものである。
政府は2008年11月4日労働者派遣法の一部改正法案を閣議決定して,国会に上程し,これから本格的に審議されようとしている。しかしながら,政府の派遣法改正案は,派遣労働者の保護を目的とし,派遣切りを制約するという抜本的改正にはほど遠いものである。政府は,非正規雇用の増大に歯止めをかけワーキングプアを解消するために,正規雇用が原則であり,有期雇用を含む非正規雇用は合理的理由がある例外的場合に限定されるべきであるとの観点に立って,労働法制と労働政策を抜本的に見直すべきである。
当会は,派遣労働者の雇用と生活の安定のため,労働者派遣法については,次のような抜本的改正を行うべきことを求める。
2009年(平成21年) 7月 1日
山形県弁護士会
会長 半田 稔