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2013年11月19日
特定秘密保護法制定に反対する会長声明
政府は,2013(平成25)年10月25日,特定秘密の保護に関する法律案(以下「本法案」という。)を閣議決定し,衆議院に提出した。
当会は,昨年,秘密保全法制定について,その重大な問題を指摘し反対する旨の意見を表明した。
本法案は,基本的に秘密保全法を踏襲するものであり,次に述べるとおり,主権者である国民の知る権利を侵害し,国政の重要な情報を隠して民主主義の根幹を揺るがすおそれがあると同時に,憲法が保障する国民の表現の自由,取材,報道の自由,プライバシーの権利などに重大な脅威を与えるものである。
まず,本法案では,「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」及び「テロリズムの防止」の4分野において,行政機関の長が「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため,特に秘匿することが必要」と判断する秘密を「特定秘密」と指定することができるとされているが,広範かつ曖昧であるため,行政機関の恣意的判断で,本来国民に開示されるべき情報が隠蔽される危険性がある。
そして,本法案は,特定秘密指定の有効期間を5年と定めているが,通算して30年まで延長できるほか,さらに,内閣の承認を得れば,それ以上の延長まで可能とされているため,一度特定秘密に指定されれば,半永久的に秘匿することが可能となる。
また,本法案では,「適性評価制度」を導入し,特定秘密を取り扱わせようとする者に対して,その適性があるかどうかを判断するため,本人のみならず家族や同居人のプライバシー情報の調査を許容するが,政府がプライバシー情報を収集,管理,利用することになれば,国民は思想信条による差別的取扱いの危険にさらされることになる。
さらに,本法案では,「特定秘密」の漏えい行為を処罰対象としているが,故意犯のみならず過失犯も処罰するうえ,さらに,共謀,教唆,扇動まで広く処罰する。「特定秘密」の概念自体が曖昧であることに照らせば,処罰範囲はさらに不明確かつ広範になり,罪刑法定主義に反するおそれがある。しかも,その法定刑の上限は,既存の関係諸法令に比して重罰化している。その結果,報道機関の取材活動に対する萎縮効果は計り知れず,報道機関の取材・報道の自由を侵害するとともに,主権者である国民の知る権利をも侵害することになる。
上記の罰則規定は,国会議員も処罰の対象としているが,これによれば,特定秘密を知得した国会議員が当該秘密に関して他の議員や専門家と議論することすら封殺されかねない。議会制民主主義の否定ともいうべき重大な問題である。
他方,特定秘密を漏えいして起訴された場合の裁判手続では,対象となる「特定秘密」の内容が明らかにならない状態で裁判が進められ,適正な裁判を受ける権利が侵害されるおそれがある。
このように本法案には到底看過することのできない重大な憲法上の疑義があるので,当会は,その制定に反対し,法案が国会で可決されないよう強く求めるものである。
2013年(平成25年) 11月19日
山形県弁護士会
会 長 伊藤 三之
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