2014(平成26)年7月1日,安倍内閣は,従来の憲法解釈を変更し,集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った。
日本国憲法は,第二次世界大戦の反省から,前文で平和的生存権を宣言するとともに,第9条において,戦争を永久に放棄し,戦力は保持せず,交戦権を否認し,恒久平和主義に基づく平和国家の建設を目指してきた。
そして,これまで政府は,憲法第9条のもとでも日本を防衛するため必要最小限度の自衛権の行使は許されると解しながらも,「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を,自国が直接攻撃されていないにもかかわらず,実力をもって阻止する権利」である集団的自衛権については,必要最小限度の範囲を超えるものであって憲法上許されない旨表明し,この憲法解釈を30年以上にわたって一貫して維持してきた。
ところが,安倍内閣は,「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず,我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において,これを排除し,我が国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がないときに,必要最小限度の実力を行使すること」は,憲法上許容されるとの閣議決定を行った。
これは,従来政府が許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認するもので,自国が直接攻撃されていないにもかかわらず他国のために戦争することを可能とし,平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えることになり,恒久平和主義を基本原理とする憲法に明らかに違反する。
また,日本国憲法には憲法改正の手続が規定されているにもかかわらず,このような憲法の基本原理に関わる重大な解釈の変更を憲法改正手続を経ずに行うことは,憲法を最高法規と定め(憲法第98条),国務大臣や国会議員に憲法尊重擁護義務(憲法第99条)を課して政府や国会を憲法による制約の下に置こうとする立憲主義にも反し,到底許される行為ではない。
政府は,本年の通常国会に,閣議決定を踏まえた関連法案を提出する予定と伝えられているが,当会は,恒久平和主義を守り,立憲主義を堅持する観点から,安倍内閣が憲法解釈を変更し集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行ったことにあらためて抗議し,その撤回を求めるとともに,今後の関係法律の改正等に反対し,これを行わないよう強く求めるものである。
以上のとおり決議する。
平成27年2月27日
山形県弁護士会