本日,日本国憲法が施行されてから満71年となる憲法記念日を迎えた。
日本国憲法は,アジア・太平洋戦争への痛切な反省を踏まえて制定されたものであり,個人の自由と権利を保障するため憲法により国家権力を制限するという立憲主義を基本理念とし,国民主権,基本的人権の尊重,平和主義を基本原理としている。この憲法のもとで,主権者たる日本国民は,すべての国民が個人として尊重される社会,戦争をしない平和国家を築くべく努めてきた。
現在,自由民主党において4項目(憲法9条に自衛隊を明記,緊急事態条項の創設,参議院議員選挙区の合区解消,教育の充実)の憲法改正案が論議されており,そうした内容の憲法改正案が今後,国会に提出され審議される可能性があるが,いずれの項目も慎重な検討が必要であり、ことに自衛隊明記案は日本国憲法の理念や基本原理に深く関わり,日本の国の在り方の基本を左右する課題ないしは問題を含んでいる。
したがって,上記憲法改正案については,それが抱え持つ課題・問題についての情報が国民に対し多面的かつ豊富に提供され,国会の審議や国民の間の検討に十分な時間が確保されるなど,国民が憲法改正の是非を熟慮できる機会が保障されなければならない。
また,実際に憲法改正手続がとられる場合には,国民投票が公正・公平な手続を通じて実施され,国民投票に国民の意思を正確に反映させることが必要である。
憲法改正手続法(国民投票法)に関しては,国民投票の14日前までのテレビ・ラジオ等における国民投票運動としての有料広告放送に何らの規制が加えられていないことや,最低投票率の定めがなされていないことについて,特に,参議院の附帯決議において,本法施行までに必要な検討を加えることとされていた。しかし,憲法改正手続法が施行された現在も,これらの点についての検討がなされていない。憲法改正手続法には投票方式など他にも見直すべき課題が多々あり、それらを含めて憲法改正の発議の前までに必要な検討をしたうえで国民投票がなされるべきである。
よって,当会は,憲法記念日を迎えるにあたり,基本的人権の擁護を使命とする弁護士の団体として,改めて日本国憲法の理念と基本原理の意義を確認するとともに,現在見られる憲法改正の動きに対して,改正案に含まれる課題・問題について国民に熟慮の機会を保障すること,憲法改正の発議に先立ち憲法改正手続法を見直すことを強く求め,その実現に向けた活動に取り組んで行く決意である。
2018(平成30)年5月3日
山形県弁護士会
会長 安 孫子 俊彦