令和元年6月18日夜に山形県沖で発生した最大で震度6強の地震によって被害に遭われた方々に対し、心よりお見舞い申し上げます。
今回の地震による被害は、自治体において行われた罹災証明発行のための住宅被害状況調査によれば、山形県鶴岡市では半壊11戸・一部損壊609戸(罹災証明発行に伴う家屋調査報告による。)・その他の被害家屋139戸(町内会、住民会からの被害家屋調査報告による。前記の一部損壊は除く。)、新潟県村上市では大規模半壊3戸・半壊20戸・一部損壊553戸に上っており、主たる被害は屋根(瓦)の損傷とされています。また、この間、山形県弁護士会、新潟県弁護士会が参加した市主催「総合相談会」においても「屋根の修理費用に関する補助などがないか」「修理費用の工面ができない」といった相談が多く寄せられました。この点、現在の被災者生活再建支援法の適用要件が、災害救助法施行令に定める自治体単位の被害要件を満たすか(同施行令第1条1号)、10世帯以上の住家「全壊」とされているところ(同条2号)、今回の地震については被災者生活再建支援法による支援は適用がありません。
今回の被災地域は高齢化・過疎化が進んでいる地域であることから被災者の自助や、市独自の支援策も限界があり、国や県の補助がなければ、被災地の復旧、被災者の生活再建は困難な状況に陥ると言わざるを得ません。被災者生活再建支援法の趣旨は大規模な災害の影響を受けた個々の被災者の生活再建の支援にあるところ、「行政区画ごとの被害世帯の数」という偶発的な事情によってその適用の有無が左右される必要性は乏しく、同法の適用がない場合においても被災者の生活再建にあたって公的な支援の必要性が否定される理由はありません。
今回の鶴岡市及び村上市の被害は,半壊、一部損壊、その他の被害家屋を合わせ、約1300世帯という広範囲にわたって被害が生じたものであり、このような状況で国から何らの支援がない状況では、「生活の再建を支援し、もって住民の生活の安定と被災地の速やかな復興」は実現できないと言わざるを得ません。また、鶴岡市、村上市は、市独自の支援策を打ち出し、山形県も県独自の支援策を打ち出していますが、財源の問題もあることから、必ずしも復旧、復興に十分なものとはいえません。
そこで、私たちは、政府及び山形県、新潟県に対し、山形県沖で発生した地震の被害に関し、被災者生活再建支援法や災害救助法の基準に関わらず、更なる支援策を講じることを求めるとともに、政府に対し、被災者生活再建支援法の適用要件を一部損壊の場合にも拡大するような抜本的な改正を求めます。
山形県弁護士会、新潟県弁護士会は、本年7月15日、合同で被災地の被害状況を視察し、協議を行いました。そしてあらためて今回の地震による被害の深刻さを感じ、法律家団体として支援活動に取り組み続けることをあらためて決意いたしました。今後とも、被災者の方々に全力で支援する体制を構築し、日本弁護士連合会をはじめとする各連合会、各単位弁護士会や関係団体と連携して最大限の支援を行う所存です。
2019年(令和元年)7月25日
山形県弁護士会 会長 脇山 拓
新潟県弁護士会 会長 齋藤 裕