Yamagata Bar Association
形県護士会

 山形県弁護士会について

 

憲法記念日を迎えるにあたり新型コロナウイルス感染症に
伴う法的課題に引き続き取り組む会長声明

 

 

 本年5月3日,日本国憲法施行から74年目の憲法記念日を迎える。

 日本国憲法は,公権力の暴走によって個人の尊厳が蹂躙され,先の戦争の惨禍がもたらされたことへの痛切な反省を踏まえ制定された。その根底には,憲法により公権力の恣意的な行使を制限し,個人の自由と権利を保障するという,立憲主義の理念がある。

 当会は,昨年の憲法記念日に,新型コロナウイルスの感染拡大に起因する様々な法律問題に対する支援に積極的に取り組むことを内容とした会長声明を発した。

 その後1年を経過したが,残念ながら新型コロナウイルスの感染拡大を収束させることはできていない。

 新型コロナウイルス感染症による市民生活への影響は広範囲にわたっているが,当会は,市民への生活支援,偏見や差別への反対,人権侵害のおそれのある国家活動の監視,の3点を重点課題として取り組みを強化していきたいと考えている。

 総務省の発表によれば,山形県の完全失業率(年平均)は,2018年及び2019年が1.7%であったのに対し2020年は2.2%であった。当会は,失業をはじめとする新型コロナウイルス感染症に関連する市民の不安解消や困りごと解決のため,今年1月に債務問題に関する,2月に生活全般に関する各電話相談を実施したほか,随時,雇用や生活保護に関する無料相談会などを開催してきた。今後も新型コロナウイルス感染症の拡大を災害と位置付けて,同感染症の影響を受けた個人債務者への「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の適用などの取り組みを強めていく決意である。

 また,コロナ禍が長引く中で,感染者やその周囲の関係者,医療関係者に向けられた偏見や差別が大きな問題になっている。このような偏見や差別は何ら根拠のない不当なものであり,日本国憲法が決して許容しないものである。

 当会は独自の啓発活動,人権侵害救済活動を行うことに加え,山形県が設置した「新型コロナによるいじめ・偏見・差別問題対策協議会」への参加を通じ,今後も,新型コロナを口実とした人権侵害が生じないよう,全力を挙げる所存である。

 現在,「新型インフルエンザ等対策特別措置法」による「緊急事態宣言」が4都府県を対象として発令されており,かつ,同法の改正によって導入された「まん延防止等重点措置」が7県を対象として適用されている。

 しかし,「緊急事態宣言」の発令要件・命令要件,及び「まん延防止等重点措置」の発動要件・命令要件は,行政罰を科される可能性があるにもかかわらず極めて抽象的である。

 そして,そのような抽象的な要件に基づいてなされる「緊急事態宣言」に基づく各種の措置,及び「まん延防止等重点措置」により,不用意な事業者名の公表等により名誉・プライバシー権や営業の自由が侵害されるなどの憲法上の問題点がある。

 新型コロナウイルス感染症を理由に憲法による人権保障がなし崩しにされることがないよう,その運用を監視していくこととしたい。

 当会は,憲法記念日を迎えるにあたって,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とする弁護士の団体として,人権擁護に努め,その使命を果たすことにより,市民のみなさんと共に,現下の試練を乗り越える決意であることを改めて表明する。

 

2021年(令和3年)4月30日

 

山形県弁護士会   
会長 田 中   暁

 


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