Yamagata Bar Association
形県護士会

 山形県弁護士会について

 

低賃金労働者の生活を支え,コロナ禍の地域経済を活性化させるために最低賃金額の大幅な引上げと中小企業支援強化並びに全国一律最低賃金制度の実施を求める会長声明

 

 

 厚生労働大臣は,間もなく,中央最低賃金審議会に対し,2021年度地域別最低賃金額改定の目安についての諮問を行い,同審議会から,本年7月頃,答申が行われる見込みである。昨年,同審議会では,新型コロナウイルスの感染拡大により,経営基盤が脆弱な多くの中小企業が倒産, 廃業に追い込まれる懸念が広がる中,最低賃金の引上げが企業経営に与える影響を 重視して引上げを抑制すべきという議論が多数を占め,地域別最低賃金額の引上げ額について目安額の提示を見送った。

 

 これに対して,山形地方最低賃金審議会は,山形県最低賃金について時給790円を3円引上げ793円にするとの答申を行い,山形労働局長も答申通りの改正決定を行った。労働者の生活を守り,新型コロナウイルス感染症に向き合いながら経済を活性化させるためにも,最低賃金額の引上げを後退させてはならないのであり,山形労働局長の昨年の引き上げの決定は大いに称賛されるべきものである。

 とはいえ,時給793円という水準は,依然として労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことが困難な水準にとどまっている。

 世界的にもフランス,ドイツ,イギリスなど多くの国で,コロナ禍で経済が停滞する状況下においても最低賃金の引上げが実現しており,我が国でも2021年度の大幅引上げが必要である。

 

 一方,最低賃金の引上げによって経営に大きな影響を受ける中小企業に対しては,新型コロナウイルス感染拡大に備えた支援策が拡充されているところではあるが,現在,国が実施している「業務改善助成金」制度は,中小企業にとって必ずしも使い勝手の良いものとはなっておらず,利用件数はごく少数であり,今後も充分な支援策を講じることが必要である。具体的には,中小企業のための社会保険料の減免や減税,補助金支給等の中小企業支援策の検討を進めるべきである。また,中小企業の生産性を向上させるための施策を有機的に組み合わせることや,これまで以上に私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律や下請代金支払遅延等防止法を積極的に運用し,中小企業とその取引先企業との間で公正な取引が確保されるよう努めることも重要である。

 

 最低賃金の地域間格差が依然として大きいことも見過ごすことのできない重大な問題である。2020年の最低賃金は,最も高い東京都で時給1013円であるのに対し,最も低い7県では時給792円であり,221円の開きがあった。そして,地方では賃金が高い都市部での就労を求めて若者が地元を離れてしまう傾向が強く,労働力不足が深刻化している。地域経済の活性化のためにも,最低賃金の地域間格差の縮小が急務である。

 

 山形県の地域別最低賃金についても年々改善傾向ではあるものの,最も高い東京都の1013円と比較していまだ220円の格差が存在している。  

 かかる最低賃金の地域間格差の存在は,当県からの有為な人材の流出を引き起こしかねないと共に,人口減少に危機感を抱いている本県において,人口還流の障壁ともなりかねない。

 

 山形県では,県,県議会,市町村,市町村議会及び産業経済団体等で構成する山形県開発推進協議会が,平成30年度以降,毎年度「政府の施策等に対する提案」において最低賃金のランク制度を廃止し,全国一律の適用を行うよう働き掛けを行ってきており,本年6月に出された令和4年度の提案においても人口の都市部集中の大きな要因である賃金の地域間格差を是正するため,最低賃金のランク制度を廃止し,全国一律の適用を行うとともに,影響を受ける中小企業・小規模事業者への支援の充実を図ることを求めている。

 

 日本弁護士連合会からも昨年「全国一律最低賃金制度の実施を求める意見書」が発表され,2021年(令和3年)5月14日には「低賃金労働者の生活を支え,コロナ禍の地域経済を活性化させるために最低賃金額の引上げと全国一律最低賃金制度の実施を求める会長声明」も発せれている。政府においても早急に,全国一律最低賃金制度の実現に向けた検討が開始されるべきである。

 

 以上のことを踏まえて,当会は,山形労働局長に対し,山形県の地域別最低賃金の大幅な引上げを図り,地域経済の健全な発展を促すとともに,労働者の健康で文化的な生活の確保を求めるものである。

 

2021年(令和3年)6月28日

 

山形県弁護士会   
会長 田 中   暁

 


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