民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法の一部を改正する法律」(以下「民法改正法」という。)の2022年4月1日の施行日まで半年を切った。
18歳という年齢は,一般的に高校生が大学生・社会人になる年齢であり,一人暮らしをきっかけとしたトラブルやマルチ商法の被害が多発する時期である。このような消費者被害が未成年者取消権を行使できなくなることにより,救済が困難となるという懸念が指摘されていた。
そこで,民法改正法の成立に際しては,参議院法務委員会において全会一致で附帯決議がなされ,①知識,経験,判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)を創設すること(法成立後2年以内),②若年者の消費者被害を防止し救済を図るために必要な法整備を行うこと(法成立後2年以内),③マルチ商法等への対策について検討し,必要な措置を講ずること,④消費者教育の充実を図ること,⑤18歳,19歳の若年者への周知徹底や社会的周知のための国民キャンペーン実施を検討すること,⑥施行日までに措置の実施,効果,国民への浸透について検討し,その状況を公表することなどが求められた。
ところが,成立から3年以上が経過し,施行まで半年を切った現時点においても,いずれの施策もいまだに不十分であると言わざるを得ない。特に,18歳,19歳の若年者が未成年者取消権を喪失することによる消費者被害拡大に対応する施策は急務であるが,必要不可欠な施策であるつけ込み型不当勧誘取消権の創設は,附帯決議に明示された期限を既に経過しているにもかかわらず,未だ立法がなされていない。
また,消費者教育についても,「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」等は実施されているものの,消費者被害の予防につながる実践的な消費者教育が全国的に十分に行われているとは言えず,特に,未成年者取消権の喪失による消費者被害拡大のおそれについての周知は不十分と言わざるを得ない。
山形県内においては、毎年、いくつかの高校で消費生活出前講座や消費生活法律授業が実施されているが、すべての若年者の消費者被害防止を図るためには、毎年、県内外問わず、すべての高校で実施することが求められる。
よって,当会は,国に対し,附帯決議に示された成年年齢引下げに伴う消費者被害防止のための実効性ある施策の速やかな実現することを求めるとともに,仮に施策が実現されないときは,未成年者取消権の行使可能年齢を引き下げないことを求める。
2021年(令和3年)10月22日
山形県弁護士会
会長 田 中 暁