特定商取引法は、消費者トラブルを生じやすい特定の取引類型を対象に、事業者による不公正な勧誘行為等の取締り等を行う法律ですが、2016年の改正の附則第6条にいわゆる「5年後見直し」が定められています。同改正法の施行が2017年12月1日であり、2022年12月に5年後の経過を迎えました。
これに関し、日本弁護士連合会は、2022年7月14日付けで「特定商取引法平成28年改正における5年後見直し規定に基づく同法の抜本的改正を求める意見書」ⅰを公表しましたが、当会も同意見書に全面的に賛同することを表明します。
とりわけ、マルチ取引・マルチまがい取引(連鎖販売取引)に関する被害は、山形県内でも一向に無くならず、山形県内における2020年度の相談件数(56件)のうち、20歳未満及び20歳代の相談件数が37.7%を占めており、若者が被害に遭う割合が高くなっていますⅱ。近年は、物品販売や仮想通貨に関する投資の契約を締結した後に、新規加入者を獲得することによって利益が得られる旨を告げてマルチ取引に誘い込む事例(いわゆる「後出しマルチ」)のトラブルが増えています。しかも、借入をしてまで契約させ、結局、利益は得られず、借金だけが残るケースも後を絶ちません。
他方、訪問販売、電話勧誘販売、訪問購入に関する被害については、当会は2015年12月8日付けで、「特定商取引法に事前拒否者への勧誘禁止制度の導入を求める会長声明」を発出しておりますが、山形県内における2020年度の相談件数(それぞれ520件、595件、45件)のうち、70歳以上の割合が最も高くなっており、高齢化社会において判断力の衰えた高齢者が悪質商法の標的とされていることがうかがわれ、今後更にこの傾向が強まることが懸念されます。消費者庁の2014年調査では96%の人が「勧誘を全く受けたくない」と回答していますがⅲ、現行法では規制が不十分であるため、山形県内の被害も無くならないのが現状です。
通信販売については、山形県内における2020年度の相談件数は2597件で、全年齢層で被害が発生しています。現行法では、インターネットによる通信販売にはクーリング・オフ規定が設けられていませんが、とくにSNSを通じたメッセージやターゲティング広告による勧誘は不意打ち性が高く、消費者が不本意な契約をしてしまうことも少なくありません。
そこで、当会は、以下のとおり、特定商取引法の抜本的な法改正をするよう求めます。
2023(令和5)年4月27日
山形県弁護士会
会長 粕 谷 真 生
ⅰ https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2022/220714.html
ⅱ 第4次山形県消費者基本計画(P11)
https://www.pref.yamagata.jp/021006/kurashi/shohi/syouhisyaplan/dai4ji.html
ⅲ 消費者庁「消費者の訪問勧誘・電話勧誘・FAX勧誘に関する意識調査」(2014年度)