Yamagata Bar Association
形県護士会

 山形県弁護士会について

 

低賃金労働者の生活を支えて地域経済を活性化するために、最低賃金額の引上げ及び全国一律最低賃金制度の実施を求める会長声明

 

 長期に及ぶ新型コロナウイルスの感染状況の継続とロシアのウクライナ侵攻の中で、食料品や光熱費など生活関連品の価格が急上昇している。労働者の生活を守り、経済を活性化させるためには、大企業だけでなく中小・零細企業も含めた全ての労働者の実質賃金の上昇又は維持を実現する必要があり、そのためにはまず最低賃金額を大きく引き上げることが何よりも重要である。

 この間、フランス、ドイツ、イギリス、韓国などの諸外国では、最低賃金額の大幅な引上げがなされているのであり、日本においても大幅な引上げが必要である。

 山形地方最低賃金審議会は、2022年度山形県最低賃金について時給822円を32円引上げ854円(前年からの引上げ率3.89%)にするとの答申を行い、山形労働局長も答申通りの改正決定を行った。労働者の生活を守り、経済を活性化させるためにも、最低賃金額の引上げの流れを後退させてはならないのであり、山形労働局長の決定は評価されるべきである。

 とはいえ、時給854円という水準は、依然として労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことが困難な水準にとどまっている。

 最低賃金の地域間格差が依然として大きく、格差が是正していないことは重大な問題である。2022年度の最低賃金は、最も高い東京都で時給1072円であるのに対し、最も低い10県では時給853円であり、その間には219円もの開きがある。その地域の最低賃金の高低と人口の増減には強い相関関係があり、最低賃金の格差は、最低賃金が低い地域の人口減ひいては経済停滞の要因ともなっている。都市部への労働力の集中を緩和し、他の地域に労働力を確保することは、地域経済の活性化のみならず、都市部への一極集中から来る様々なリスクを分散する上でも極めて有効である。

 地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費は、最近の調査によれば、都市部と地方の間で、ほとんど差がないという分析がなされている。これは、都市部以外の地域では、都市部に比べて住居費が低廉であるものの、公共交通機関の利用が制限され、通勤その他の社会生活を営むために自動車の保有を余儀なくされることが背景にある。そもそも、最低賃金は、労働者が「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために必要な最低生計費を下回ることは許されない。労働者の最低生計費に地域間格差がほとんど存在しない以上、全国一律最低賃金制度を実現すべきである。

 厚生労働省の中央最低賃金審議会に設置された「目安制度の在り方に関する全員協議会」が本年4月6日にまとめた報告では、現行のAないしDの4段階の目安区分を3段階とすることが提案されている。しかし、これではCランクの引上額を、Aランクの引上額より大幅に上回るものとするなど抜本的な方策でも採られない限り、地域間格差の迅速な解消は望めない。山形県は従前DランクであったものがCランクとなるか、これは結局最低ランクに留め置かれて、都市部との格差にお墨付きが与えられたともみれる内容である。

 中央最低賃金審議会は、現行の目安制度が地域間格差を解消できなくなっていることを直視し、目安制度に代わる抜本的改正策として、全国一律制実現に向けた提言をなすべきである。

 日本弁護士連合会からも2023年4月14日には「低賃金労働者の生活を支えて経済を活性化するために、最低賃金額の引上げ及び全国一律最低賃金制度の実施を求める会長声明」が発せられている。

 政府においても早急に、全国一律最低賃金制度を実現すべきである。

 山形県では、県、県議会、市町村、市町村議会及び産業経済団体等で構成する山形県開発推進協議会が、2020年度以降、毎年度「政府の施策等に対する提案」において最低賃金のランク制度を廃止し、全国一律の適用を行うよう働き掛けを行ってきた。昨年5月に出された2023年度の施策提案においても人口の都市部集中の大きな要因である賃金の地域間格差を是正に向けて、最低賃金のランク制度を廃止し、全国一律の適用を行うとともに、影響を受ける中小企業・小規模事業者への支援の充実を図ることを求めている。

 以上のことを踏まえて、当会は、地域経済の健全な発展を促すとともに、労働者の健康で文化的な生活の確保を図るため,山形労働局長に対し、山形県の地域別最低賃金の引上げを行うよう求めるものである。

 

2023年(令和5年)6月23日

山形県弁護士会  

会長 粕 谷 真 生

 


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