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2023年10月26日
敵基地攻撃能力ないし反撃能力の保有に反対する会長声明
1 政府は、2022年12月16日、新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画を閣議決定し(以下「本件閣議決定」という。)、他国の領域内にあるミサイル発射手段等を攻撃するためのいわゆる敵基地攻撃能力や、更には、攻撃対象を敵基地以外の指揮統制機能等に拡大することになりかねない、いわゆる反撃能力の保有を進めようとしている。
2 しかしながら、これは次のとおり憲法9条に違反している。
憲法9条は、戦争を永久に放棄し、戦力は保持せず、交戦権も認めないとして、徹底した恒久平和主義を定めている。これまで政府は、憲法9条のもとでも個別的自衛権の行使は許容され、日本に対する他国からの武力攻撃の排除のために必要な最小限度の自衛権の行使は許されるが、他国の領域における武力の行使は基本的に許されないとの解釈をしてきた。また、政府は、2005年に北朝鮮の核・ミサイル保有問題に関連して自衛隊法を改正した際、敵基地攻撃を目的とした装備は考えていないと答弁していた。
しかるに、本件閣議決定に基づき他国の領域にある敵基地等に直接的な脅威を与える攻撃的兵器を保有することは「戦力」の保持に該当し、他国の領域内にある敵基地を攻撃することは自衛権の発動要件を逸脱するものであり、憲法9条に違反する。
3 2015年に集団的自衛権の行使を容認する安保法制が制定された際、当会は 憲法9条のもと集団的自衛権の行使は認められないとしてきた政府解釈を逸脱するものであるから違憲であると主張したが、政府はその当時、我が国は敵基地攻撃を目的とした装備を保有しておらず、個別的・集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行うことは想定していないと答弁していた。本件閣議決定はその答弁を転換するものである。
我が国は、日本国憲法のもとで不戦の誓いと恒久平和主義を堅持し、平和を維持してきた。しかし、敵基地攻撃能力ないし反撃能力を保有することは、周辺諸国の軍備増強を招き、際限なき軍備拡張競争につながる危険がある。また、個別的自衛権の行使であれ、集団的自衛権の行使であれ、他国の領域を直接攻撃する敵基地攻撃能力ないし反撃能力がひとたび行使されれば、他国の報復を招き、武力行使の応酬の結果、国民の多大な犠牲と広範な国土の荒廃をもたらしかねない。
4 よって、当会は、我が国が敵基地攻撃能力ないし反撃能力を保有すること及びそのための準備を進めることに反対する。
令和5年(2023年)10月26日
山形県弁護士会
会長 粕 谷 真 生
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