Yamagata Bar Association
形県護士会

 山形県弁護士会について

 

憲法記念日にあたっての会長声明

本日、日本国憲法が施行されてから78年となる憲法記念日を迎えた。今年は戦後80年となる節目の年でもある。

戦前、わが国は国策を誤り、侵略的行動を重ねてアジア太平洋戦争に突入し、諸外国とりわけアジア諸国の人々に甚大な被害を与えた。他方、国内においても、治安維持法をはじめとする治安立法によって情報と思想を統制し、国民の人権を抑圧しつつ、国民を無謀な戦争に駆り立て、軍人・市民あわせて約310万人もの尊い命が犠牲となった。アジア諸国の死者数は2000万人以上にも及ぶといわれる。

日本国憲法は、この戦争に対する痛切な反省の下に、政府の行為によって二度と戦争の惨禍を起こさないことを決意して制定された。その決意は、政府の暴走と権力濫用を許さない立憲主義の理念と、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重の三つの基本原理として、日本国憲法に結実している。これらは決して改変してはならない日本国憲法の根幹である。

敗戦後3年目にあたる1947年(昭和22年)5月3日に施行された日本国憲法は、国民のたゆまぬ努力により徐々に社会に根を下ろし、戦後80年にあたる今日まで、国民の人権や生活を守る役割を担ってきた。わが国の社会には個人の尊重という人権の中核的理念に照らして今なお多くの課題が存しており、日本国憲法が果たすべき役割はこれからも重大である。国民には、引き続き、この憲法が保障する自由や権利を不断の努力をもって保持し、社会生活のあらゆる場所に押し広げてゆく責任がある。また、わが国は、日本国憲法の下で、世界各国との協力と友好を深め、今日まで一度も戦争することなく平和国家としての道を歩み、国際社会から一定の評価と信頼を得てきた。しかし、2014年(平成26年)に憲法の解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定がなされたのを大きな転換点として、その後、多くの国民が反対する中、新たな安全保障関連法が成立し、近年は敵基地攻撃能力の保有方針が閣議決定されるなどしており、日本国憲法の平和主義はいま、試練の時にある。さらに国外に目を向けると、世界中で戦争や武力紛争が絶えず起きており、子どもも含めた多数の人々が日々、なすすべもなく殺されている現実があるのであって、憲法前文に掲げられているとおり、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することをいま一度強く確認する必要がある。

当会は、戦後80年の節目を迎える年の憲法記念日にあたり、あらためて、戦前戦後の歴史と日本国憲法がわれわれの生活や平和に対して果たしてきた役割に思いをいたすとともに、基本的人権の擁護を使命とする弁護士の団体として、日本国憲法の理念と基本原理をより実質化するための諸活動に今後とも全力で取り組んで行くことを決意するものである。

2025年(令和7年)5月3日

山形県弁護士会
会長 伊 藤 陽 介


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