Yamagata Bar Association
形県護士会

 山形県弁護士会について

 

国選弁護報酬の大幅な増額及び各種弁護費用の抜本的改善を求める会長声明

現行の国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用が低廉であることが、弁護士の国選弁護離れに繋がっている。

司法制度改革により弁護士が増えて自由競争が激化したことにより、弁護士は、国選弁護業務の費用対効果を意識せざるを得なくなった。被告人段階では何度接見しても加算はない。準備に相当な時間や労力を要することが多い勾留等に対する準抗告、保釈請求等の弁護活動は、それが認められなければ加算事由とならないし、それが認められても勾留等に対する準抗告については5万円の加算、保釈については1万円の加算に過ぎない。さらに、小規模会である当会では、本庁の弁護士が担い手の不足している支部の国選事件を担当することがあるが、例えば自動車で片道約2時間を要する酒田に被疑者接見に行った場合に、遠距離接見加算は1回の接見につき8000円が認められるに過ぎない。これらの各種加算を含めても、捜査・公判段階を合わせた国選弁護事件の報酬は10~20万円程度であり、適正かつ充実した弁護活動を行うための対価として著しく不十分であるし、近時の物価や賃金の上昇に伴う弁護士事務所の経営コストの増加すら反映されていない。国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の構造的な不採算性が解消されなければ、国選弁護業務から撤退する弁護士が増え、国選弁護制度が衰退することになりかねない。全国的に、国選及び当番弁護士名簿の名簿登載者の減少傾向が続いているが、当会においても、減少傾向が現れ始めている。

当会ではこれまで、被疑者・被告人の権利擁護のため、当会独自の予算で当番弁護士制度等を運用してきた。また、2025年には、記録謄写・当事者鑑定の費用等の援助制度を定め、時代の進展に合わせ高度化する刑事弁護活動を、市民が費用負担の心配なく享受できる体制の拡充に注力してきた。しかし、そもそもこれらの諸措置は、無罪推定の原則が憲法上保障される我が国において、本来全て国費によるべきものである。多岐に亘る現代の刑事弁護活動について、国費で賄われることを前提に、これを支える確固とした予算措置の議論を行い、現行の国選弁護制度の基礎報酬及び謄写費用や訴訟準備費用といった各種弁護費用が極めて不十分であることの抜本的な解決を図っていくべきである。

袴田事件、福井女子中学生殺人事件と、相次いで再審無罪判決が出された。プレサンス事件、大川原化工機事件等、冤罪事件は後を絶たない。国民の人権保障の観点から、刑事弁護活動の重要性が改めて認識されている。

近時、佐賀県警察科学捜査研究所の職員によるDNA鑑定で不正行為が発覚したが、本来、捜査機関側の鑑定の信用性を争うべき事案は多く、数々の冤罪事件でも弁護側の科学的鑑定が無罪主張の柱となってきた。しかし、現行の国選弁護費用体系では、当事者鑑定の費用をはじめ、本来行われるべき多くの弁護活動の費用が賄われず、極めて不公平なものとなっている。その結果、証拠開示が不十分な中で人質司法に抗し、冤罪防止や更生支援等に鋭意努めるべき国選弁護人の活動が相当制約されているのである。国選弁護業務のための国家予算は160億円前後と極めて僅少な額で推移している。膨張を続ける100兆円規模の国家予算に占める割合も年々低下しており、人権保障の経済的基盤の拡充は立ち遅れているという他ない。

よって、当会は、被疑者・被告人の更なる権利擁護と公正な刑事司法制度実現のため、国会、法務省、財務省等に対し、国選弁護制度の基礎報酬の大幅な増額及び各種弁護費用の抜本的改善を求める。

2026年3月27日

山形県弁護士会
会長 伊 藤 陽 介


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