Yamagata Bar Association
形県護士会

 山形県弁護士会について

 

「国旗の損壊等の処罰に関する法律」案に反対する会長声明

  1. 2026年6月16日、自由民主党、日本維新の会、国民民主党、参政党の四党は、共同提案の議員立法として、「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法により、公然と国旗を損壊し、除去し、又は汚損」(第2条第1項)する行為について、「2年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金」の刑罰を科する内容の「国旗の損壊等の処罰に関する法律」(以下「国旗損壊罪」という。)の法案(以下「本法案」という。)を国会に提出した。
    しかし、本法案は、次に述べるとおり、立法の必要性が乏しいうえ、憲法19条が保障する思想及び良心の自由、憲法21条が保障する表現の自由を侵害するおそれがあり、さらに、憲法31条の保障する罪刑法定主義の観点からも疑義がある。
  2. 国旗損壊罪を創設する理由として、外国の国章を損壊する行為は外国国章損壊罪(刑法92条)により刑事罰の対象とされているが、日本国の国章を損壊する行為はその対象となっていないため、両者の不均衡を是正することが必要であるなどと説明されることがある。しかし、外国国章の損壊行為が処罰される理由は、同罪は外国国章を害する行為を通じて我が国の外交作用の円滑・安全という国家的法益が損なわれる危険が生じることを防ごうとするものであり、日本国の国章を損壊する行為にはそのような保護法益が当てはまらないのであるから、そもそも不均衡との評価をすべきではなく、是正の必要もない。
  3. 国旗に関して、1999年に「国旗及び国歌に関する法律」が成立し、「日の丸」を「国旗」と定めた際、政府は「国旗の損壊等を新たに刑罰の対象とすることは考えていない」との見解を表明していたが、その理由として「国家の威信の保護の在り方として刑罰をもって強制することが適当かという根本的な問題」があると述べていた。
    自由民主党は、今般、国旗損壊罪の保護法益は「国旗を大切に思う国民感情」であると説明しているが、国旗に対する個人の評価は様々であり、刑罰法規において「国旗を大切に思う国民感情」を保護することは、「国旗を大切に思うこと」を強制することにつながる。これは、憲法19条が保障する思想及び良心の自由を侵害するものであり、戦前の思想統制につながる危険がある。
  4. 国旗を損壊する行為が政治的な思想や意見の表明、時の権力を批判する手段として行われる場合も想定され、実際そのような表現行為がなされているが、そのような行為が刑罰をもって制限されることになれば、それはまさしく憲法21条が保障する表現の自由そのものに対する侵害となり、ひいては国民の表現活動を委縮させ、表現の自由やその根底にある思想・良心の自由に対する重大な侵害ともなる。
  5. 本法案では、第2条第1項で「人に著しく不快または嫌悪の情を催させるような方法により、公然と国旗を損壊し、除去し、又は破損した者」を処罰の対象者とし、同条第2項で「前項の方法に該当するかどうかの判断は、行為の外形、周囲の状況その他の客観的な事情を総合的に勘案して行うものとする」とされている。
    しかしながら、「不快又は嫌悪の情」は人それぞれで異なるのであり、そのような内心の感情を犯罪の構成要件に加えることは、極めて抽象的で不明確に過ぎ、更に、「行為の外形、周囲の状況その他の客観的な事情を総合的に勘案して行う」というのでは、その行為時の規範として余りに不明確であり、憲法31条の保障する罪刑法定主義の観点からも疑義がある。
  6. 以上のとおり、本法案は、立法の必要性が乏しいうえ、憲法19条が保障する思想及び良心の自由、憲法21条が保障する表現の自由を侵害するおそれがあり、さらに、憲法31条の保障する罪刑法定主義の観点からも疑義がある。
    よって、当会は、「国旗の損壊等の処罰に関する法律」案に強く反対する。

2026年(令和8年)7月3日

山形県弁護士会
会 長  手 塚 孝 樹


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